オーガニックはおいしい

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オーガニック野菜がおいしい理由は?


・おいしい理由はちゃんとある

 オーガニックで作られた野菜はおいしいと言われます。なぜでしょう。オーガニック野菜がおいしくなる理由はいくつかありますが、まず最初に、野菜のおいしさの条件について考えてみましょう。

 一番の条件に「鮮度の良さ」が挙げられます。どんな野菜でもとれたてはほんとうにおいしいものです。トマトやきゅうり、ナスなどの貯蔵が効くものでもとれたての味は違います。時間が経てば経つほど味が落ちていく代表的な野菜、とうもろこしや枝豆では鮮度の違いで全く味が変わってきたりもします。私が家庭菜園をやめられない理由のひとつですが、鮮度だけを見るとオーガニックも一般的な野菜も変わりはありません。

 次に挙げられるのが「その野菜の旬」です。昨今では周年栽培技術も進み、また、産地を次々に替えて一年のいつでも店頭に並ぶよう野菜が作付けされているため、消費者には野菜の旬がわかりづらくなりました。また、いちごのように流通やニーズの都合で、本来の旬、初夏が冬に変わってしまった作物もあります。しかし、どんな野菜にも「最もおいしい時期」があるものです。実はオーガニック野菜は「旬」に強いのです。

 オーガニックで野菜を作る条件として、強い農薬がまけないことや、ムリな栽培ができないことが挙げられます。そのため、オーガニックではそれぞれの野菜が栽培しやすい時期に栽培されています。これはある意味「旬の野菜を作っている」ということです。

 そして最後の条件が「土」です。「良い土からおいしい野菜が生まれる」とよく言われますが、これはイメージではなく科学的な理由があります。そしてその条件を満たすのがオーガニックという栽培方法なのです。


・良い土からおいしい野菜が生まれる理由

 ふかふかの土。いかにもおいしい野菜が取れそうですが、おいしい野菜を作る人の畑をいろいろ見てきた経験から言えるのは、大切なのはその畑にたくさんの微生物がいるかどうかです。土の微生物が作物に対してどのような影響を与えているか、まだほとんどわかっていませんが、長年有機農業を営んでいた人の畑では、肥料をほとんど入れなくても作物が生育することがあります。この畑の土壌分析をしても、肥料分はほぼ出てこないのに、立派な作物が生育します。これは、土の中にいる微生物が植物に肥料分を供給し、いい影響を与えているからと考えられています。

 土壌中の微生物はいわば腸内細菌のようなもの。善玉菌もいれば、病気を引き起こす悪玉菌もいます。一般的な栽培では、同じ作物を続けて作ることによって起きる土壌病害を防ぐため、病気を起こす悪玉菌を殺す土壌消毒剤が散布されます。これは悪玉菌のみならず、善玉菌もすべて殺してしまいます。すぐに微生物は繁殖しますが、善玉菌・悪玉菌のバランスは崩れたまま。こういった畑で栽培する作物は、微生物の助けをあまり借りられないと言ってもいいでしょう。

 善玉菌は作物と共生し、病害虫に対する抵抗性を与えたり、作物の排泄物を食べたりしています。まだはっきりとはわかってはいませんが、最近の研究では、作物の味や香りに影響を与えているのではないかと考えられています。オーガニック野菜がおいしい理由が科学的に解明されつつあると言ってもいいでしょう。

 微生物のエサとなる有機物を入れ、土壌消毒剤や除草剤などを散布しないオーガニックの畑には豊富な微生物が存在しています。微生物は土の中の有機物を分解しながら繁殖し、土を豊かにし、野菜が元気に生育できる団粒構造を作ります。オーガニックの畑でできた野菜がおいしいと言われるのは、このあたりに原因がありそうです。最近では、殺菌剤はもちろんですが、殺虫剤も土壌微生物を殺すことがわかってきたそうですから、微生物の大切さは今後の研究でさらに明らかにされていくでしょう。

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・おいしさと肥料の関係

 家庭菜園の本を読むと、作物の体を大きくするのはチッソ肥料と書いてあります。収量を上げるためにはチッソ肥料がたくさんあることが条件ですが、適正な量以上に入れると、病害虫に弱くなり、農薬を使わざるを得なくなります。これらの理由から、一般的な栽培の野菜は腐りやすく、おいしくないとよく言われます。チッソ肥料が多いと食味が悪くなることが知られているからです。

 オーガニック=善、化学肥料=悪、と善悪で捉えられがちなのですが、どちらもチッソ肥料が多ければ虫や病気が多発し、食味は悪くなります。一昔前、まだ畑の微生物相が整っていない有機栽培の人の野菜は、虫食いの多い野菜が主でした。これを有機=安全だからと「虫が食べてるのは安全な証拠」なんて言う人がいましたが、そうではなく、チッソ肥料が過剰で虫に食べられまくっていれば、どんな野菜でもおいしくはありません。逆に、自然栽培の野菜がおいしいとよく言われる理由は、チッソ肥料があまり入れられていないからでしょう。

 一般栽培でもオーガニックでも、肥料バランスをきちんと整え、有機物を畑に入れている人の栽培した野菜はおいしいものです。このあたりはオーガニックだからおいしいというわけではなく、生産者の技術によるところが大きいのです。とは言え、何年もオーガニックの畑を栽培している人の畑には、肥料を入れなくてもすばらしい野菜が収穫できるようになるようです。これは微生物が作物に肥料分を与えているからと考えられています。

 このような畑で取れる野菜はほんとうにおいしいものです。ということで、結論として、オーガニックの野菜はおいしいのです。