トップページ | 有機農業の基本と技術 | 有機農業に必要なもの 〜観察力〜
これまで、物理性・生物性・化学性の3つが大事と言ってきました。それらは知識として持っておかねばならないもの。しかしそれ以上に大切なものがあります。それは「観察力」。作物を見る目です。
昔から「作物をうまく作るには、作物にあなたの足音を聞かせること」とも言われてきました。自分の畑に足しげく通い作物の状態を見ることが、良い作物を作ることにつながります。しかし現在の農業は、いかに手間をはぶいて収量を上げるかの一点で効率化が図られています。
大規模な畑を一度に耕し、作物を大量に栽培し続けてきた結果、農民たちは、自分の作物をじっくり見ることをしなくなったと言ってもいいでしょう。
農業とは土と自然に向き合う仕事です。作物は動くことはできませんが、眺めているだけでいろいろなことを教えてくれます。それを読み取るのが人間の仕事。経験を積めば、作物の姿形から土の中の状態を知ることもできるのです。
例えば早朝、畑に行ってみます。朝露に濡れた作物が新しい芽を伸ばそうとしています。この新しい芽の色は何色ですか? 黄緑色だったり緑色だったり、日々変わっているはずです。
例えば葉の形。45度の角度でしゅっと立っているか、地面にべたっとくっついているか。これら作物の姿と形、色合いに「偶然」はありません。きちんと理由があるのです。
新芽の色が淡い緑色ならば、土壌中の窒素分が適正な印。濃い緑だと窒素を多く吸っています。前日に雨が降ったのか、もともとの施肥が多いのか。窒素過剰は病気や虫の原因になりますから、何か対策を打ってもいいかもしれません。

また新芽の先が少し茶色く枯れていたらカルシウム欠乏症。石灰が畑に十分にある場合は、水分の不足が原因かもしれません。葉先のふちが白っぽく枯れてきたら、カリ欠乏症。カリは十分にあったはずなのに、なぜ効いていないのか。そんなことを考えます。
日々の観察力を養っていると、自分の畑の作物が何を欲しているか、ある程度理解できるようになります。毎日畑で同じ野菜を見ていると、生育ステージによって野菜に変化が起きていることにも気づくでしょう。毎日10分でも15分でも、いつも同じ時間に作物を見てみましょう。作物は必ずあなたに話しかけてくるようになります。
さてここで、土壌分析が必要な理由がわかっていただけたかと思います。
自分の畑の土壌の状態を知らなかったらどうなるでしょう。カルシウム欠乏症が出ているから、単純に石灰を散布してしまう。
畑がカルシウム過剰であったなら、ますます過剰になってしまいます。塩基飽和度が上がれば、土壌バランスは狂い、いろいろな障害が発生します。
土壌分析は栽培の羅針盤のようなもの。その羅針盤をもとに、どのように舵を切るのか、またどこでスピードを上げるのか、観察力を駆使して判断するのです。

土壌分析を行い、計算して施肥をし、日々何が起きているか五感を働かせて観察し栽培を繰り返す。そして毎日新しい発見をし、知識がどんどん増えていく。これが農業の楽しみ、喜びであり、醍醐味なのです。
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先端の枝がへの字になっているトマトは窒素が過剰な状態。
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正しいきゅうりの生育は、上から下まで葉の大きさが同じ。そして葉が全部上を向いている。だらっと葉が下がっているのは窒素が多い状態。
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葉先が茶色く枯れている。
カリは植物体内を転流するため、症状が下葉に現れる。 -

生長点が茶色く変色し枯れている。カルシウムは植物の体内を転流しないため、葉先に症状が現れる。
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葉先が少し茶色になり枯れ始めている。トマトの水分調整を失敗し、一時的にカルシウム欠乏が起きた状態。









